京都大学医学部附属病院 脳神経外科

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中枢神経系原発悪性リンパ腫

中枢神経系原発悪性リンパ腫は、脳に発生する悪性リンパ腫であり、原発性脳腫瘍の3%程度と報告されていますが、年々増加傾向にあります。中高年に多く発生します。脳内に発生して頭蓋内圧亢進症状、認知機能障害、運動障害などの症状で発症する場合や眼内に発生して視力障害で発生する場合(ぶどう膜炎)などがあります。比較的に症状が早く進むことも多いですが、多発性硬化症などと鑑別が必要な進行を示す場合もあります。リンパ組織が存在しない脳に悪性リンパ腫が発生する原因は明らかでありませんが、免疫不全状態、EBウイルス感染などに関連して発症することがあります。悪性神経膠腫、転移性脳腫瘍、多発性硬化症などの鑑別が重要です。このため、生検術で診断を確定させます。

一般的な治療

手術は生検術となります。全摘出しても根治することはありませんし、定位放射線治療も有効とは言えません。一般的な治療は全脳の放射線治療や化学療法となります。中枢神経系原発悪性リンパ腫は、体幹部に発生するリンパ腫で用いられるCHOP療法やR-CHOP療法があまり有効ではありません。一般的には標準治療としてメトトレキサートを大量に投与し、全脳の放射線治療を行う「照射前大量メトトレキサート療法+放射線治療」が行われています。この治療の2年後生存率は65%程度となりますが、治療に伴う白質脳症などの晩期障害が問題となっています。さらに治療効果を高めるためにさまざまな化学療法の開発、晩期障害を軽減するために放射線治療を併用しない治療が進んでいます。

京大病院での治療

 70歳以下の中枢神経系原発悪性リンパ腫では、血液内科と協力して放射線治療を用いないボンプロトコール変法(modified Bonn protocol)による化学療法単独治療を実施しています。CD20陽性のB 細胞性リンパ腫では、リツキシマブを併用します。これまで化学療法単独の本治療を行った27症例では、無増悪生存期間が15.2ヵ月でした。CD20陽性のB 細胞性リンパ腫では、無増悪生存期間が17.4ヵ月で有効性が示されています。
 70歳以上のCD20陽性のB 細胞性リンパ腫では、放射線治療を用いないリツキサン併用大量メトトレキサート療法を実施しています。
 こうした化学療法の効果が認められない場合や早急な治療効果が必要な場合には、全脳の放射線治療を用いております。

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中枢神経系原発悪性リンパ腫