頭蓋内胚細胞腫
胚細胞腫は、生殖細胞になる前の未熟な細胞から発生します。卵巣、精巣に生じる性腺発生と、後腹膜、前縦隔、頭蓋内といった性腺外発生があります。頭蓋内胚細胞腫は、小児に多い腫瘍で、下垂体、視床下部、松果体に生じることが多いです。全脳腫瘍の3%、小児脳腫瘍では15%前後です。このために、内分泌障害、複視、水頭症症状などで発症します。成熟奇形腫は全摘出で根治されますが、その他は悪性腫瘍であり、化学療法と放射線治療での治療が必要です。
胚細胞腫にはいくつかの腫瘍型があります。ジャーミノーマ、成熟奇形腫、未熟奇形腫、混合型胚細胞腫、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、胎児性癌です。なかではジャーミノーマが60-70%を占めており、治療成績も向上しております。
頭蓋内胚細胞腫
- 胚腫 ジャーミノーマ
放射線治療50Gyで10年生存割合(率)90%前後、20年では80%前後 - 中等度悪性群 (悪性奇形腫、ジャーミノーマあるいは奇形腫主体の混合腫瘍など)。
放射線治療のみでは5年生存率50%前後 - 高度悪性群(卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、胎児性癌に加えて、これらの悪性要素が主体の混合型胚細胞腫など)
放射線治療のみで3年生存割合(率)は30%以下で、5年以上の生存は困難。
京大病院での治療
診断生検や水頭症治療には低侵襲な内視鏡手術で行っています。多くの胚細胞腫に伴う水頭症は第3脳室開窓術で水頭症を改善することが可能です。
頭蓋内胚細胞腫に対する内視鏡手術
また、放射線治療は、強度変調放射線治療(IMRT)を採用しています。胚細胞腫は小児期発症であり、晩期障害が大きな問題となります。強度変調放射線治療は、コンピュータで高度な解析を行い治療が必要な標的部位に放射線を集中して照射できる革新的な照射技術です。これにより合併症を軽減しながら根治性を高めるといった従来では実現不可能であった放射線治療が展開できるようになりました。胚細胞腫では実際に脳実質に照射される放射線量を減量することができます。
日本中枢神経胚細胞腫研究グループに参加しています。治療は「初発の頭蓋内原発胚細胞腫に対する放射線・化学療法第II相臨床試験」のプロトコールに沿って行います。試験となっておりますが、ほぼ標準治療と考えられる治療法です。
頭蓋内胚細胞腫に対する強度変調放射線治療(IMRT)