京都大学医学部附属病院 脳神経外科

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髄芽腫

髄芽腫

髄芽腫は、小脳に好発する小児悪性脳腫瘍です。比較的稀な腫瘍であり、2001-2004年の報告では、日本では年間98例で原発性脳腫瘍の0.7%です。発生の原因は不明です。特徴は、乳幼児から幼児、小脳虫部発生、髄腔内播種があり、初発症状は頭痛、嘔吐、小脳失調などで、水頭症を伴っていることも多いです。治療は、手術、化学療法、放射線治療と集学的な治療が必要です。最近の治療の進歩で生命予後は格段に改善されました。そこで、現在は、より後遺症や晩期障害を軽減した治療を目指す方向に進んでいます。
最近の遺伝子解析の結果、遺伝子異常で4つの分類 (WNT、SHH、Group 3、Group 4)があること、予後が異なることが明らかとなってきました。こうした遺伝子異常をリスク分類として用いることや遺伝子異常を標的とした治療開発が進んでいます。

contents17_04図1: 髄芽腫 11か月男児

治療に重要な分類

病理診断による分類では、medulloblastoma with extensive nodularity、desmoplastic /nodular medulloblastoma、classic medulloblastomaの標準リスク群、anaplastic medulloblastoma、large cell medulloblastoma の高リスク群が知られています。
Changの分類は、播種の程度による病期分類です。M0 :くも膜下・血行性転移なし、 M1:髄液中に顕微鏡的腫瘍細胞あり、M2 :小脳、大脳くも膜下腔、第3脳室~側脳室の肉眼的播種、M3 :脊髄くも膜下腔の肉眼的播種、M4 :神経管外転移の分類となりますが、実際的には肉眼的な播種の有無が重要です。
治療リスク分類は治療を選択する際に用います。標準リスク群は、①3歳以上、②手術後の残存腫瘍が1.5cm²以内、③転移(播種)がない、の3条件をすべて満たすものです。高リスク群は①、②、③のいずれかを満たさないものです。
遺伝子異常で4つの分類では、 予後良行群のWNTからSHH、Group 4、予後不良群のGroup 3の順となります。これの分類は免疫染色でも可能と言われますが、実際には容易ではありません。

京大病院での治療

 手術で安全に腫瘍を全摘出することが重要です。術前脳血管撮影を行い、腫瘍血管と性状血管を正確に判断して安全な手術に取り組んでいます。合併する水頭症で早期の治療が必要な場合は、内視鏡手術で対応しています。
 化学療法と放射線治療では、主に米国のthe Children’s Oncology Group(COG)のプロトコールを用いています。
 集学的な治療が必要となりますので、脳神経外科、小児科、放射線治療科で構成される小児脳腫瘍ユニットで治療を担当します。入院時から小児腫瘍の専門職の治療以外の支援も行います。正確なリスク診断から、不要な大量化学療法を避け、放射線治療では最新の機器を用いることで正確な線量分布、リスク器官の晩期障害回避、脱毛予防を行っています。後遺症や晩期障害の軽減を目指す方針で治療にあたっています。
 再発性髄芽腫に対する治療も積極的に行っています。化学療法の再導入、追加放射線治療などを行い、できる治療を最後まで・きらめない治療を提供しています。