京都大学医学部附属病院 脳神経外科

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患者さんへ

脳神経外科を受診される皆様へ


脳神経外科は基本領域診療科1)であるため、その診療内容は決して手術だけではなく、診断・治療・手術前後の管理など脳神経疾患の診療すべてにわたります。脳神経外科が担当する疾患は、脳血管障害・脳腫瘍・脊椎脊髄・先天奇形・てんかん・頭部外傷その他など非常に幅広く多岐にわたります。詳しくは対象疾患のページをご覧ください。

京大病院 脳神経外科の特徴

以前から京大病院脳神経外科で行われてきた治療は、主に1)他施設で治療が難しいような疾患(巨大脳動脈瘤や脳動静脈奇形あるいは巨大脳腫瘍など)、2)まれな疾患で他施設では治療経験が少ない疾患(もやもや病、フォンヒッペルリンドー病など脳脊髄血管芽腫、脊髄動静脈奇形)、3)大脳高次機能を温存しながら行う脳腫瘍やてんかんの手術 など高難度疾患が中心でした。

しかし、ベッド数や手術枠の増加などに伴い現在では、4)脳ドックなどで発見された無症候性あるいは軽症の疾患(頚動脈狭窄や未破裂脳動脈瘤など)に対する予防的外科治療も数多く行われるようになっています。また、2011年に脳卒中診療部が開設されてからは、急性期脳梗塞・くも膜下出血・脳出血などの脳卒中にも常時対応ができるようになりました。脳神経外科専門医26名・脳卒中専門医16名・脳血管内治療専門医18名というマンパワーの充実ぶりは、地域中核的脳卒中治療施設(包括的脳卒中センター※2)として理想的なものになっています。さらに2015年12月には全国でも類を見ないほど広い床面積をもつ脳卒中集中治療病棟が開設され、脳卒中急性期からロボットスーツを用いたリハビリテーションが行われています。

京大病院では脳血管造影や手術が同時に可能なハイブリッド手術室、本邦で初めて導入された3テスラ術中MRI装置、ポータブルCTなど手術に関する機器も国際的にも最高レベルの整備がなされています。脳血管内カテーテル治療と開頭手術を組み合わせた高難度脳血管病変に対する手術、神経内視鏡による低侵襲手術、様々なITを用いた術前検査、高度な術中モニタリングを用いて、意識覚醒下に神経症状を確認しながら脳腫瘍の摘出を行う手術などは京大病院が得意とする領域です。

インフォームド・コンセント

外科治療を行なうべきかを考える場合には、十分なインフォームド・コンセントが必須です。インフォームド・コンセントとは患者さんご自身が十分な説明を受け、それを理解して、治療法を選び、その治療を受けることに同意することを意味しており、その主役は医師ではなく患者さんご自身です。つまり「説明する」ではなく、「説明を受ける」ということです。京大病院脳神経外科ではインフォームド・コンセントを大切にしており、どの患者さんにも同じ内容のお定まりの説明書をお渡しするのではなく、術者自身が患者さんの病状に合わせた説明書を作成し、できるだけわかりやすく説明し、患者さんに理解していただくことにしています。一方で、患者さんの価値観や人生観は多様で、リスクに関するような説明、ストレスを感じるような説明については、かならずしも全て聞きたくないという方も少なくありません。病名の告知や病状の説明をどのように受けたいのかということについても、入院時にお尋ねしています。

おねがい

われわれはインフォームド・コンセントを大切にしておりますが、実際の医療現場ではインフォームド・コンセントには限界があります。滞りなく治療してもかならずしも期待した効果がもたらされるとは限りません。すなわち医療自体がもつ不確実性があるからです。また、専門家ではない方にとっては、いくら説明を受けても、専門的な内容の機微まで完全に理解することには限界があります。

しかしながら、われわれもできる限りご質問にはお答えしたいと思いますので、分からない点があれば、ぜひ遠慮なくお尋ねください。担当医に尋ねようと考えていたのに、担当医と話すときにはつい度忘れすることもあります。担当医にお尋ねになりたい内容をメモなさってください。メモすることにより、患者さんご自身もお聞きになりたい内容がご自身の頭の中でもまとまっていくと思います。

京大病院脳神経外科ではできる限り患者さんの希望に沿った対応を心がけています。できるかぎりの努力をいたしますが、われわれ医療スタッフの個人的な努力だけでは、投入できる時間や人材に限界があることもご理解ください。

※1 基本領域診療科

日本では内科・外科・小児科など19の診療科が基本領域診療科として認められています。脳神経外科・整形外科・眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・産婦人科などは手術を行う診療科ですが、手術だけではなくその疾患領域の診断・治療全般を担当していることから基本領域診療科となっています。
これに対して、担当する領域に内科系診療科と外科系診療科が存在する診療領域(たとえば循環器内科と心臓血管外科、呼吸器内科と呼吸器外科、消化器内科と消化器外科など)では、それぞれの診療科は基本診療科である内科ないし外科のサブスペシャリティーという位置づけになっています。心臓については診断やカテーテル治療、薬物治療を主に循環器内科医が行い、手術に関係した診療を心臓血管外科医が行います。

※2 包括的脳卒中センター

脳卒中集中治療室を持ち、常時rt-PA血栓溶解・脳外科手術・脳血管内手術を含む急性期治療に対処できる診断体制がある治療施設を意味する。このためには、脳卒中専門医のみならず、開頭手術ができる脳神経外科専門医、カテーテル手術を行う脳血管内治療専門医が常に必要である。包括的脳卒中センターで治療を行うと、そうでない施設で治療する場合と比べて脳卒中の死亡率が26%減少することがビッグデータでも示されている。