京大病院もやもや病支援センター

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活動内容

もやもや病の診療・研究の特色

 京都大学脳神経外科のグループは、本症に対する国内初のバイパス手術を報告して以降、積極的な治療を行ってきました。当院における2023年1年間のもやもや病患者入院件数は182件であり、日本全国や海外から患者さんが集まっています。こうした豊富な経験のもと、小児もやもや病に対する直接バイパス術や、脳出血を効果的に予防するための直接バイパス手術などに取り組んでいます。また、バイパス手術の出血予防効果を証明した多施設無作為比較試験、出血ハイリスク血管の解明、もやもや病感受性遺伝子の解明、小児長期追跡調査、高次脳機能障害の特徴の解明など、多くの臨床研究に取り組み、ガイドライン(診療指針)の改訂に貢献してきました。

 

もやもや病と学習・高次脳機能

 もやもや病の診断や治療は日々進歩しており、自立した日常生活を送ることのできる患者さんが増えています。一方、最近の研究によると、1~2割の人が、身体の障害がないにもかかわらず、就学や就労での困りごとを抱えているとされています。これらの困りごとは、脳のさまざまな機能の凸凹が原因で起こるのではないかと考えられています。

 当院では、就学・就労のお悩みを抱えるもやもや病患者さんに対して、専門のスタッフが神経心理学的検査などを行い、学校・職場への情報提供書(報告書)作成や、学校との就学支援会議の開催などを通じて、適切な治療や社会的サポートが受けられるような取り組みを行っています。また、もやもや病における高次脳機能障害の特徴や、診断に有用な神経心理学的検査や画像検査を明らかにする研究にも取り組んでいます。
 もやもや病研究班では、このような京大方式の支援を全国に広げるための「就学支援マニュアル 」の公表を行っています。また、「学校への情報提供書ひな形 」も公開しています

もやもや病と妊娠・出産

 もやもや病をもつ妊産婦では、特に未診断例(実はもやもや病であるけれど、まだその診断がついていない患者さん)において、妊娠・分娩中の脳出血や脳梗塞のリスクが上昇することが知られています。既に診断・治療がなされているもやもや病の妊産婦では、一般に安全に妊娠・出産を迎えていただくことが可能と考えていますが、血圧管理や過呼吸への対応など、専門的な管理が求められます。当院では、産婦人科と脳神経外科が協力し、多くのもやもや病患者さんの妊娠・出産に携わっています。もやもや病の妊産婦に対して帝王切開分娩が選択されている施設もありますが、もやもや病の妊産婦において帝王切開が経腟分娩に比べて安全であるという医学的根拠は今のところありません。当院でもやもや病患者さんが分娩する場合は、分娩時の血圧変動や過呼吸を回避するために麻酔科と連携して経腟分娩(硬膜外麻酔和痛分娩)を24時間体制で長年提供しており、安全に出産いただいています。1987年以降、70件以上のもやもや病患者さんの分娩を手掛けています。

 

もやもや病の医療費助成制度について

 もやもや病には、申請手続きをすれば、医療費の自己負担額を少なくできる制度(医療費助成制度)があります。保険福祉掛では、患者さんの年齢やお住まいに応じた申請方法をご案内いたします。詳しくはこちらをご覧ください。

 

もやもや病の遺伝子

 京都大学脳神経外科は環境衛生学分野との共同研究で、RNF213遺伝子の変異がもやもや病の発症リスクを高めることを発見しました。RNF213の特定により、もやもや病の病態解明は大きく前進しましたが、全てが解明された訳ではありません。この遺伝子の変異をもつ方全員がもやもや病を発症するわけではありません。またもやもや病は、親から子どもへ必ず遺伝するという病気でもありません。遺伝子検査から得られる情報の解釈には、専門的な知識が必要です。当院では、専門知識を持った医師や遺伝カウンセラーによるサポート体制を整えて、対応に当たっています。お気軽に専門外来医師までご相談ください。

 当院の研究グループは、RNF213がどのように病気の発症に関わっているのかを解明するため、現在も精力的に研究を行っています。より正確な診断や、新しい治療法の開発につなげ、皆さまのもとへ届けられたらと考えています。