初発の頭蓋内原発胚細胞腫に対する放射線・化学療法第II相臨床試験
初発の頭蓋内原発胚細胞腫に対する放射線・化学療法第II相臨床試験
胚細胞腫に有効な化学療法薬が出現し、放射線治療に加えて化学療法が積極的に併用されるようになりました。1995年から始まった「厚生労働省がん研究助成金による胚細胞腫に対する多施設共同臨床試験(注)」では228例の治療を行い、以下の結果が得られました。(注:この臨床試験は、厚生労働省がん研究助成金による班研究(平成7~10年小児悪性脳腫瘍の治療体系の確立、および平成12~15年脳高次機能保全をはかった小児悪性脳腫瘍の治療法の確立、のひとつとして行いました。)
① ジャーミノーマでは、放射線治療の範囲を小さく(全脳から局所へ)し、かつ線量も少なく(50Gyから24Gy)しても、10年生存率97%が得られた。
② 中等度悪性群には、放射線治療の範囲を小さく(全脳から局所へ)したが線量は50Gyとし、化学療法を合計8回行ったところ、10年生存率89%が得られた。
③ 高度悪性群では、放射線治療と化学療法を最も強力に行ったところ、10年生存率59%が得られた。
④ 放射線治療と化学療法の副作用はある程度発生したが、副作用死はありませんでした。しかし、後に4例に悪性腫瘍(がん)、4例に血管病変(血管腫など)が発生しました。放射線治療および化学療法ではある頻度で避けられない晩期副作用です。
この成績を従来の放射線治療単独治療成績と比較すると、治療の負担軽減とより良好な生存率が得られたと評価できます。しかし、当時の臨床試験の精度が現在ほど高くなく、放射線治療範囲、放射線治療と化学療法開始時期など細部で徹底さにかけており、これらを統一するとさらに良好な生存率が得られる見込みとの分析がなされました。
本臨床試験では、その治療方法の有効性と安全性を科学的に証明し、同じ腫瘍にかかられる患者さんの治療に役だってもらうことを目的としています。
臨床試験の計画は、参加される患者さんが不利益を受けないよう、専門の医師などにより倫理的及び科学的立場から厳しく検討されます。さらに、各病院の臨床試験審査委員会(臨床試験の計画を倫理的及び科学的に審査する病院内の委員会で、IRB委員会などとも呼ばれる)でも内容が審議され、承認を得た後に実施されます。
あなたがこの臨床試験に関して知りたいこと、心配なことや健康被害に関する相談がありましたら、いつでも下記までご質問、ご連絡ください。
【担当者】
京都大学大学院医学研究科 脳神経外科
【問い合わせ先】荒川芳輝 〒 606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
TEL: 075-751-3459 FAX: 075-752-9501