自家腫瘍ワクチンによる初発膠芽腫治療効果無作為比較対照試験に関する研究AFTV-GBM-PIIb/III
自家腫瘍ワクチンによる初発膠芽腫治療効果無作為比較対照試験に関する研究
(1)対象となる患者さん
京都大学脳神経外科で手術を受けられ、膠芽腫と診断された入院中の患者さんで、16歳以上で75歳以下の方を対象とします。ただし、合併症や治療経過、検査結果により、担当医師が不適切と判断された患者さんは参加いただけません。なお、あなたが脳腫瘍によって書くことが困難な場合には、ご家族など代諾者の方にもご説明し、同意をいただくこととなりますので、ご理解とご協力をお願いします。
(2)この研究で行う治療方法
前回までの臨床研究では「自家腫瘍ワクチン」を70人以上の方に投与しましたが安全性に関して問題はありませんでした。効果については、再発の方でMRI上の再発部分が縮小し、初発の方ではワクチンへの反応(遅延型皮膚反応(DTH-2))があった方が再発までの期間が有意に長く、生存期間も長い傾向があった、という効果が示唆されています。
そこで、今回の臨床研究では、自家腫瘍ワクチンの効果を確認するために、患者さんをランダムに2つのグループにわけ、
・一方のグループには「現在の標準療法(手術+放射線+テモダール)+自家腫瘍ワクチンの注射」、
・他方のグループには「現在の標準療法(手術+放射線+テモダール)+自家腫瘍ワクチンに似せた比較対照となる害のない偽薬の注射」
を行って、本当に自家腫瘍ワクチンには効果が見られるのかどうかを確かめたいと計画しています。
自家腫瘍ワクチンは無償です。万一、残念ながら再発した場合、当科でできる限りの治療を継続いたしますが、「比較対照となる偽薬の注射」を行っていた患者さんには、もし患者さんのご希望があれば、自家腫瘍ワクチンを無償で提供いたします。
ここで、「自家腫瘍ワクチン」について説明します。手術で切除した膠芽腫の組織は病理診断のために必ずホルマリン漬けにします。ホルマリン漬けにされるので膠芽腫の細胞は完全に死んでしまいます。この膠芽腫組織を小さな断片にしたものと、免疫反応を高める目的で、同時にツベルクリンと微量のBCG抽出液を含む懸濁液を作り、これを自家腫瘍ワクチンとして腕の皮内または足の皮内に予防接種のように注射します。一方、比較対照となる偽薬は、ホルマリン固定熱変性ヒト血清アルブミン・ヒトヘモグロビン沈殿の混合物の懸濁液と、ツベルクリンと微量のBCG抽出液を含む懸濁液を作り、これを腕の皮内または足の皮内に予防接種のように注射します。
ツベルクリンもBCGもすでに人体に投与されていて安全なものですが、使用目的と剤型が異なるため、医薬品としては認可されていないものも含まれています。また、接種部位での効果を持続させるために特殊な粒子に包み込まれていますが、その粒子の危険性はないことがこれまでの研究でわかっています。
次に、「放射線療法および化学療法」についてですが、膠芽腫に関しては、手術のあと、放射線療法を行い、さらにテモダールを併用するのが標準治療となっています。そこでは60グレイという量の放射線を照射する約6週間の間、テモゾロマイドを毎日飲み続ける方法(導入療法)と、放射線療法が終了した後に、1カ月の間に5日間だけテモゾロマイドを飲むというサイクルを継続する方法(維持療法)を組み合わせることになっています。
今回の臨床研究は、これまでの研究の結果から、手術後、「放射線とテモダール」という標準療法に比べ、「放射線と自家腫瘍ワクチンのみ」でも、どうやら同等以上の治療効果があるようだという観測に基づいて計画しています。放射線と自家腫瘍ワクチンのみよりもさらにワクチンの効果を高めるため、放射線とワクチンに加え、血液の状態などを検査しながら副作用がなるべく出ない範囲でテモダールを併用していくという方法をとります。これにより、従来の飲み方よりは少ない副作用で、より高い効果を得ることができるのではないかと考えています。
新しい治療法を開発した場合、その治療法が本当に役に立つかどうかは、臨床試験によって詳細な科学的検討を行わなければ、最終的にはわかりません。場合によっては、標準治療法よりも成績が悪くなることも起こり得るからです。臨床試験には、臨床研究、医師主導型治験、製薬会社等が行う治験という種類があります。今回は、当科だけではなく、いろいろな大学病院の脳神経外科の先生達がボランティアで参加する共同の「臨床研究」にあたり、学術的な立場から新しい治療法の効果の有無を検討しようというものです。
以下、患者さんが膠芽腫であるため、今回の臨床研究にご参加いただけるかどうかをおたずねします。もし患者さんがこの臨床研究に参加しても良いと了承された場合に、患者さんの情報がデータセンターに送られることになっています。この場合、個人情報は臨床研究関係者以外に漏洩することはありません。
あなたがこの臨床試験に関して知りたいこと、心配なことや健康被害に関する相談がありましたら、いつでも下記までご質問、ご連絡ください。
【担当者】
京都大学大学院医学研究科 脳神経外科
【問い合わせ先】荒川芳輝 〒 606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
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