京都大学医学部附属病院 脳神経外科

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硬膜動静脈瘻

硬膜動静脈瘻(こうまくどうじょうみゃくろう)とは?

硬膜動脈(心臓から脳や脊髄をつつむ膜に血液を送る血管)の血液が直接一つまたは多数の正常では開いていない穴(シャント、瘻)を通って直接静脈(脳や脊髄から心臓に血液を返す血管)に流れ込む病気です。

症状

圧の高い動脈血が直接静脈に流れ込むので、静脈内の圧が高くなり、脳脊髄の血液の流れがわるくなり、発生する場所により、頭痛、耳鳴、目の充血、目が飛び出す、視力が落ちる(失明する場合もある)、けいれんなど様々な症状を起こします。脳出血を起こし重篤な後遺症を残す場合もあります。

診断・検査

主にCT、MRI、血管撮影で診断します。的確な治療方法を選択し、行うためには、高精度の血管撮影機器が必須です。

治療

治療法には2種類あります。

  1. 手術
  2. 血管内手術(カテーテルで行う治療方法)

発生する場所や瘻、関連する動静脈の状態から判断し、手術または血管内手術またはその両方で治療を行います。近年は、血管内手術の機器、技術の進歩により、大半の硬膜動静脈瘻は血管内手術で治癒できるようになりました。

症例1

海綿静脈洞とよばれる部分に出来た硬膜動静脈瘻の血管内手術例を呈示します。

9_1-1 写真1.

 

左目が充血し、目が少し突出してきたため、病院を受診した。

9_1-2 写真2.

 

血管撮影。動脈(赤矢印)と静脈(青矢印)が同時に写っている。
通常、動脈と静脈が同時に写る事は無い。
この静脈は目に逆流しているため、目が充血したり、目が飛び出してくる。
急速に視力が落ち失明する場合もある。

9_1-3 写真3.

 

3次元血管撮影(3D-DSA)
動脈(赤矢印)から静脈へ開いた穴(シャント;緑の点線)を通って、目の静脈(青矢印)に血液が直接流れ込んでいるのがわかる。

9_1-4 写真4.

 

3次元血管撮影(3D-DSA)
動脈(赤矢印)から静脈へ開いた穴(シャント;緑の点線)を通って、目の静脈(青矢印)に血液が直接流れ込んでいるのがわかる。

9_1-5 写真5.

 

治療後、結膜充血と眼球突出は完全に消失した。

 

しかし、血管内手術だけでは治療が出来ない、または不向きな硬膜動静脈瘻もあります。我々は患者さんの状態や病気の状態を詳しく検討し、安全で確実に治療できる治療法を選択しています。

症例2

脊髄にできた硬膜動静脈瘻の手術例を呈示します。

MRI 血管撮影  
9_2-1 9_2-2 手術前

 

患者さんは、歩けなくなり、排尿や排便が困難な状態になり、病院を受診した。
MRI:脊髄に多数の異常に拡張した血管を認める。
血管撮影:硬膜動静脈瘻により脊髄の静脈が異常に拡張している。

9_2-3 9_2-4 手術後

 

MRI:脊髄の異常血管は消失している。
血管撮影:異常血管が消えているのが確認された。
術後、症状は改善しているが、まだ後遺症が残っている。一旦、脳や脊髄が障害されると治療を行っても完全に回復しない場合もあるため、できるだけ早期に正しい診断を下し、適切な治療を行う事が重要である。