京都大学医学部附属病院 脳神経外科

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ヒトグリオーマ幹細胞株の樹立とそれを用いた病態解析に関する研究

ヒトグリオーマ幹細胞株の樹立とそれを用いた病態解析に関する研究


1. 同意の自由・同意撤回の自由について
「ヒトグリオーマ幹細胞株の樹立とそれを用いた病態解析に関する研究」に協力されるかされないかは自由です。途中で気が変わるのも自由です。研究協力されるかどうかは自由意志で決めて下さい。強制はいたしません。協力して頂いても、して頂かなくても、当院では同じように最善の医療をいたします。
この説明書をお読みになり担当医の説明を聞いて、脳腫瘍手術検体の一部を提供して下さることに同意して頂ける場合は、別紙の同意書に署名または記名・押印をして下さい。
一旦同意された場合でも、不利益を受けることなく一方向的に文書により、同意を撤回することができます。その場合、提供頂いた検体、それより作成した腫瘍幹細胞や
iPS 細胞、それに付随する医療情報は破棄され、以降は研究に用いられることはありません。ただし、同意撤回の申し出をされた時点ですでに研究が進んでいたり、論文が発表されている場合においては、実際には回収や廃棄が困難なことがあり、引き続き使わせて頂くことがあります。
本研究に関する意思の確認書の原本は、実施機関において保管します。その写しをお渡しします。

2. 研究計画が倫理委員会で承認されたものであること
本研究計画は、京都大学大学院医学研究科・医学部及び医学部付属病院 医の倫理委員会及び京都大学再生医科学研究所、物質-細胞統合システム拠点及び iPS 細胞研究所合同医の倫理委員会で審査され、京都大学大学院医学研究科長及び京都大学医学部付属病院長、京都大学 iPS 細胞研究所長により承認されたものです。

3. 研究の目的
あなたの病気をよくするために、お薬、放射線治療などを組み合わせた、いろいろな方面からの治療がなされています。しかし、それらの治療法はまだ完全なものではなく、より良い治療法の開発を目指して、全世界中で研究が行われています。治療法の開発には、どのような原因で病気が生じているのか、どのようなお薬を使えば病気を治すことができるのか、もしそのようなお薬が見つかった場合、そのお薬を安全に使うことができるのかなど、あらかじめ多くのことを確かめておく必要があります。そのためには患者さんの病気にかかっている部分(組織といいます)を用いて研究を行うことが必要となります。
そこで今回、あなたが現在治療を受けておられる病気の原因を調べたり有効な治療法を見つけ出すために、あなたの脳腫瘍手術検体の一部を研究に使用したいと考え、研

究へのご協力をお願いしています。
なお、本研究により得られる成果をもとに、新しい治療方法を開発するためには、数年以上の期間が必要です。

4. 研究の実施体制について
この研究は京都大学 iPS 細胞研究所・山田泰広教授と京都大学医学部附属病院脳神経外科学との共同研究として行います。研究期間として、承認日より平成 30 年 3 月 31 日までを予定していますが、研究の進展により、倫理委員会の承認を受けた上で、延長されることがあります。

5. 研究の方法
次の項で記載するように、あなたの脳腫瘍組織の一部を頂き、そこから細胞を取り出します。取り出した細胞を、京都大学 iPS 細胞研究所に搬送し、そこで腫瘍細胞および腫瘍細胞から抽出・分離した腫瘍幹細胞を培養し、様々な解析を行うことにより、腫瘍が起こった原因や腫瘍の特徴などを調べます。また新たな技術として、皮膚などの分化した体細胞を初期化し、皮膚だけでなく様々な組織や臓器の細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力を持つ多能性幹細胞に変化させることができる iPS 細胞技術を用いて、腫瘍細胞を変化させて、病気の原因や、治療法の開発に関する研究も行います。
また、疾患研究の着実な遂行のため、健常細胞と疾患細胞の遺伝子の比較が必要となることがあります。このため、患者さんの血液検体を術前術後の血液検査などの際に追加で 5ml ほど採取させて頂きます。

6. 組織の採取について
組織を採取させていただくのに先立ち、所定のウイルス感染症にあなたが擢患していないかを、血液を採取して調べさせていただきます。検査結果は、ご希望があればお知らせすることができます。組織採取の可否については、感染症検査の結果も踏まえて検討の上、決定させていただきます。

脳腫瘍検体:術中の迅速病理検査でグリオーマと診断がついた例につき、手術の際に摘出される脳腫瘍検体の一部を用います。もともと手術による摘出された一部を使用するため、本研究により新たに患者様に負担をかけること、摘出量が増えることはありません。
血液検体:術前後の血液検査の際に、5ml ほど血液を追加で採取します。

7. 作成した腫瘍細胞およびグリオーマ由来 iPS 細胞の使用について
作成した腫瘍細胞・グリオーマ由来 iPS 細胞を用いて、病気の原因や治療法の開発に向けた研究を行います。ただし、実際の治療のために使用することはありません。iPS 細胞と同じようにいろいろな細胞に分化することができる胚性幹細胞(Embryonic stem
cell、ES 細胞)の使用に関しては、詳しいルールを国が定めていますが、iPS 細胞に関しては、まだ詳しいルールは決められていません。現在、iPS 細胞の使用に関して禁じ

られていることは下記です。
1)ヒト iPS 細胞を使用して作成した胚(注:胎児のもとになるものです)の人又は動物の胎内への移植その他の方法によりヒト iPS 細胞から個体を作成す ること。
2)ヒト胚へヒト iPS 細胞を導入すること。
3)ヒト胎児へヒト iPS 細胞を導入すること。
4)ヒト iPS 細胞から生殖細胞(注:精子や卵子のことです)の作成を行う場合には、これを用いてヒト胚を作成すること。なお、本研究では、ヒト iPS 細胞から生殖細胞の作製は行いません。
この計画で作成したグリオーマ由来iPS 細胞の使用に関しても、上記の事は堅く守ります。

8. 遺伝子の解析について
作成された腫瘍細胞およびグリオーマ由来 iPS 細胞の遺伝子変化を調べることにより、腫瘍の発生や進行の原因を特定し、新たな治療法の開発をめざします。

9. 個 人 情 報 に 関 し て
あなたの脳腫瘍から作成した腫瘍細胞については、匿名コードを割りふり、どの患者さんに由来する細胞であるか、わからないようにしてあります。必要な場合には個人を識別できるように、匿名コードに対応した表を別に管理し、データの破棄の請求などに対応できるようにします(連結可能匿名化)。照会は個人情報管理者のみが行えるようにし、個人情報が漏れる危険性はきわめて低いと考えられます。

10. 研 究 計 画 の 開 示 に つ い て
研究計画の詳細をお知りになりたい場合は、特許等の保守義務がある部分以外は、開示できます。

11. 研 究 成 果 の 公 表 に つ い て
この研究の成果は学会発表や学術誌、データベース上などで公に発表されることがあります。その際には個人情報の保護に慎重に配慮し、患者さん個人に関する情報(氏名など)が外部に公表されることは一切ありません。この研究計画に対する同意を途中で取り消された場合、それ以降の研究は行わず公表も行いませんが、それまでにすでに研究結果が論文などで公表されていた場合等、それまでの研究結果について廃棄できない場合があります。

12. 研究に協力することによる予想される利益と不利益
この研究に参加することで、あなたの病気の治療にすぐに役立つことはありません。現時点では研究段階であり、実際の治療に貢献できる成果が得られるかどうかは不確定だからです。そのため、解析の結果得られる遺伝情報も研究段階であり、本研究では遺伝情報の開示は原則として予定しておりません。しかし、研究に参加して頂くことで、あなたの病気の原因がわかったり、新しい薬や治療法が発見されたりすれば、将来、あ

なたやあなたと同じ病気の患者さんの治療に役立つ可能性があります。予想される不利益としては、1)組織採取に関連したもの、及び 2)個人情報の漏洩によるフライバシーの侵害が考えられます。1)に関しては、手術に際して摘出された検体のみを使用するため、余分な検体を摘出することはなく、本研究に伴いあなたにに負担を与えることはありません。このため、本研究に参加することで、あなたに健康被害が生じることはありません。2)に関しても、匿名化などの個人情報を守る工夫を行い、その管理を厳重に執り行います。
本研究を進める上で、本来は意図していなかったような情報が偶然判明し、しかもそれがあなたやあなたの血縁者の健康上に何かしらの影響を及ぼしうる情報となることがあり得ます(偶発的所見)。疾患に深く関連する遺伝子が見つかったりする場合が想定されます。偶発的所見が発見された場合は、あなたの希望がある場合、情報を提供致します。

13. 研究から生じる知的財産に関する権利について
あなたの組織に由来する腫瘍細胞を用いた研究の結果により、特許等の知的財産が生み出される可能性があり、知的所有権が生じることが予測されます。この知的所有権は、提供された検体に含まれているそのものに対してではなく、研究者達が研究やその成果の応用を行うことによって初めて生まれてきた価値に対するものです。そのため、「検体を提供したのだから、その検体に関わる知的所有権を当然もつはずだ」と、提供された患者さんおよびその関係者が主張することはできません。また、その知的所有権により経済的利益が生じても、同じ理由によりその権利を主張できません。なお、知的財産に関しては、基本的にすべて京都大学が管理します。

14. 費用について
この研究に必要な費用は、私達の研究費(厚生労働省や文部科学省よりの公的な研究費、産学連携による研究費など)でまかないます。患者さんに一切のご負担はございません。

15. 問い合わせ先
この研究への協力について何か分からないことや心配なことがありましたら、いつでも担当医師にご相談下さい。



【担当者】

京都大学大学院医学研究科 脳神経外科 

【問い合わせ先】荒川芳輝    〒 606-8507   京都市左京区聖護院川原町54   

TEL: 075-751-3459  FAX: 075-752-9501