京都大学医学部附属病院 脳神経外科

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顔面けいれん

1:顔面けいれんとは| 2:顔面けいれんの原因| 3:顔面けいれんの治療

顔面けいれんとは

顔面けいれんは,自分の意思とは関係なく顔の片側がピクピクと動く病気です。顔の筋肉が動かなくなる「顔面麻痺」とは逆に、顔の筋肉が動きすぎる病気です。最初のうちは目の周りが時々ピクピクするだけで、疲れ目や睡眠不足の際のまぶたのけいれんと似ていますが、やがて口元や顎の下まで動くようになります。ひどくなると一日中けいれんが起こり、けいれん時には片眼が開けられなくなることもあります。
顔面けいれんの特徴は必ず顔の片側だけに起こることです。両目の周りが動く場合には、顔面けいれんとは別の病気である可能性があります。
また、顔面けいれんは緊張すると起こりやすくなります。このため、人前に出る職業の方などでは仕事中に症状が悪化して困ることがあります。

顔面けいれんの原因

顔面を動かす神経(顔面神経)は、脳の中の『脳幹』という部分から出て、頭蓋骨の小さな穴を通って頭蓋骨を出た後、顔面の筋肉へ分布します。顔面けいれんは、顔面神経の根もとが、蛇行した脳の血管(小脳動脈など)によって圧迫されることで起こります(下図)。血管の拍動により顔面神経が刺激されることで、顔面がピクピク動くことになります。

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顔面けいれんの例。左の顔面神経の根もとが小脳動脈によって圧迫されています(矢印)

顔面けいれんの患者さんでは「コトコト」という特徴的な耳鳴りが、顔面けいれんと同じ側の耳に起こることがあります。これは顔面神経が、音を内耳に伝えるための小さな骨(耳小骨)にも向かっているからです。

最近では脳のMRI検査によって顔面神経を圧迫している血管を見つけることが可能となっています(下図)。

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顔面けいれんの治療法

顔面けいれんは良性の病気で、放っておいても命にかかわることはありません。ただし、だんだんと症状が悪化することが多く、症状でお困りの場合には治療で治すことが可能です。 治療法としては、ボツリヌス毒素療法と手術療法があります。

ボツリヌス毒素治療

ボツリヌス毒素とはボツリヌス菌が産生する筋肉を麻痺させる毒素です。これを非常に薄めてお薬にしたものを顔面の筋肉に注射します。顔面の筋肉の動きを軽く麻痺させることで、顔面けいれんをおさえます。顔面神経への圧迫を治す根本的な治療ではありませんが、体への負担の少ない治療法で、3、4カ月は効果があります。

手術療法

手術によって顔面神経への圧迫をとりのぞく根本的治療です。耳の後ろの骨に小さな穴をあけ、手術用顕微鏡を見ながら神経を圧迫している血管を移動したり、神経と血管の間に綿のような小さなクッション材を入れます。

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右側の手術のイメージ。皮膚切開線を点線で書いています。顔面神経と小脳動脈との間に綿のようなクッション材を入れて減圧しています。

手術は全身麻酔で行いますが、小さな範囲の皮膚切開と開頭で済みますので、体への負担の比較的少ない手術です。2週間程度の入院期間で治療が可能です。手術により9割以上の患者さんで効果が得られます。なお、手術後数か月をかけて徐々に効果が表れてくる患者さんが3割ほどいらっしゃいます。このため、手術直後にすぐには効果が見られなくてもがっかりせずに、経過を見ることが大切です。