医学生・研修医の方へ
脳神経外科をめざす皆さんへ
京都大学脳神経外科学教室の特長は、京大に脈々と伝わるリベラリズムと、本邦で屈指といえるマンパワーです。東は静岡から西は高知・小倉まで30施設を超える地域中核的な公的ないし準公的病院を中心に合計約50の関連病院としてもち、教室同門の脳神経外科医は約450名です。大きなマンパワーというスケールメリットを生かすことにより様々な選択が可能であり、画一的ではなく個々の教室員の人生観に合わせた多様なキャリアプランニングが可能になります。所帯が大きいからこそ、選択肢が多くなるということです。最近は毎年のように産休に入る女子医師が続いていますが、休暇中の知識維持のためのセミナーや育休明けのサポートなども年々充実してきています。国内他大学や海外からの研修・留学者も多く、知己がひとつの病院や大学教室だけにとどまらず、人の輪がひろがります。また、同じ釜の飯を食う同級生の数も多く、同世代との切磋琢磨の中から生涯の友人を得ることができます。
脳神経外科が対象とする領域は、脳血管障害・脳腫瘍・脊椎脊髄・先天奇形などの小児脳神経外科・てんかんなどの機能的脳神経外科・頭部外傷・ハビリテーションなど幅広く多岐にわたります。治療手段も直達手術だけではなく、脳血管内手術・神経内視鏡手術・定位的放射線治療・など幅広い選択肢を自らの診療科の中にもっています。これは内科がカテーテルインターベンションを行い、外科医は手術をする心臓領域とは大きな違いで、診療科間で競合する必要がありません。そして各分野におけるトップリーダーが京都大学および同門の関連病院に勤務しています。このため、京都大学脳神経外科で研修を始めると、これらの施設をローテート勤務できるので、各種専門医資格や技術認定資格を取得するための教育環境が整っているだけではなく、最先端の技術トレーニングを受けることができ、個人の特性に合わせた多様な未来の開拓が可能です。
京大病院が得意としている治療は、巨大脳動脈瘤や脳動静脈奇形あるいは巨大な脳腫瘍など他施設では治療が困難な疾患、機能的脳外科の手法を用いて大脳高次機能を温存しながら手術するグリオーマ治療やてんかん外科、治療症例数では本邦でも屈指といえるもやもや病などの特異な疾患などです。また、本邦で最大級のスペースを誇るstroke care unitがあり、急性期脳卒中も多く搬入されています。さらに、本邦で初めて導入された3テスラ術中MRIや企業と共同開発した世界初といえるポータブルCTなど手術室における機器整備も最先端の陣容となっています。
脳神経外科一般病棟は平成27年12月に竣工したばかりの新病棟内にあり、平成31年には新病棟がもうひとつ建設される予定で、そこには脳神経外科専用のICU病棟・ロボットリハビリテーション病棟が整備される予定になっています。
ハード面だけではなく、画像診断の読影や病態解釈など大学ならではの知識面でのきめ細かい指導とさまざまな最先端の研究にふれることができるのも京大の魅力のひとつです。
京大病院で後期研修を開始する場合には、京大病院でこのような研修を1年~1年半行った後に、地域中核的な病院に赴任して術者としてのトレーニングを受けます。専攻医が実際の術者として経験できる機会は、いわゆるhigh volume hospitalとして有名な施設よりも、地方都市において地域中核的な施設のほうが多く提供できます。ここでもそのような関連病院を数多く持つという京都大学脳神経外科学教室のスケールメリットを有効利用することができます。
脊椎脊髄・先天奇形などの小児脳神経外科・てんかんなどの機能的脳神経外科については、high volume hospitalといえどもなかなか専門的に研修することができないのが現実です。京都大学の研修プログラムでは上記の地域中核的な病院における研修の後にこども病院において小児先天性疾患を、脊椎脊髄疾患を専門的施設において研修する専門領域ローテート研修を行います。なお、機能的脳神経外科については京都大学や北野病院が得意とする分野です。そして、この専門領域ローテート研修の後に、国立循環器病研究センター・北野病院・神戸市立医療センター中央市民病院・倉敷中央病院・小倉記念病院などの大規模病院に赴任して専門医取得を目指してもらうことになります。
平成16年に始まった臨床研修制度の影響で、一時的には大学院を志望する若者が激減しましたが、最近は専門医を取得した後に大学院で研究する若者が多くなりました。京都大学脳神経外科学教室では現在30名を超える大学院生が臨床的および基礎的な研究に従事しています。京都大学脳神経外科学教室の大学院生はいわゆる社会人大学院生ではなく、非常勤勤務以外には基本的には研究専従です。また、決して大学院に入ることが義務化されているわけではなく、大学院に入らず関連病院で臨床を続ける若者もいます。これらも各教室員の自由な選択に委ねられています。
大学院における研究は、研究成果によって医学を進歩させるという公の目的だけでなく、論理的な思考いわゆるlogical thinkingのトレーニングとしての効果もあります。臨床における診療は、訪れる患者さんの愁訴や疾患にどのように対応していくかというもので、いわば毎日受け身すなわち受動態の仕事です。どうしても対応すること、こなすことの連続になりがちです。これに対して、研究においては、創り上げたい目標や証明したい事実を考え、それに対する研究仮説をたて、研究計画を練り、研究進捗を振り返り、自分の研究の弱点を克服するためにはどうすればよいかということを考え、さらに研究を進めていくことになります。つまり自分が主体となる能動態の仕事です。実は臨床においても新しい医療や新しい手術法によって困難な疾患にチャレンジしていく場合、あるいは手術など自分の技量をみがいていくためには、このlogical thinkingの姿勢が必ず必要になります。脳神経外科医としての人生の一時期に、研究に従事することにより、大学院は自らを磨くまたとないよい機会でもあります。
京都大学脳神経外科学教室同門会では、同門会員を対象とした教育プログラムとして脳血管障害・脳神経血管内治療・脳腫瘍・脊椎脊髄・画像診断・手術の各領域における教育研修会を毎年それぞれ1回開催しており、専門医研修と生涯教育に力を注いでいます。これも各専門領域にトップリーダーをもつ京都大学脳神経外科学教室であるからこそできることだと考えています。是非、我々のグループで後期臨床研修を行い脳神経外科専門医となり、明日のリーダーを目指して下さい。